多度大社「上げ馬神事」の真相と現在|歴史・ご利益・見どころ完全解説
三重県桑名市に鎮座し、「北伊勢大神宮」として古くから篤い信仰を集める多度大社。毎年5月の「多度まつり」で奉納される「上げ馬神事」は、勇壮な神事として全国に知られる一方で、動物福祉の観点から激しい社会的議論の渦中に置かれてきました。ネット上では「神事が廃止されたのではないか」「伝統が完全に形骸化したのでは」といった憶測も飛び交っています。
歴史の転換点を経て、現場では何が変わり、何が守り継がれているのでしょうか。現地での取材動向や公式発表資料、歴史的記録をもとに、論争を呼んだ神事の最新状況から、由緒ある白馬伝説、授かりたいご利益、参拝時に押さえておくべき見どころまで客観的な視点から解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:議論を呼んだ上げ馬神事は、馬への負担を最小限に抑えるため「土壁の撤去」「スロープ化」「動物福祉基準の徹底」など抜本的な改修が完了し、新たな運用形態へ移行した。
- 要点2:多度大社は「お伊勢参らばお多度もかけよ」と詠まれた名社であり、天津彦根命を祀る北伊勢大神宮として、商売繁盛・厄除け・雨乞いなど強力なご利益を持つ。
- 要点3:神馬「錦琴号」に代表される白馬伝説や限定の御朱印・白馬お守り、混雑回避ルートや駐車場対策を押さえることで、本来の清らかな信仰空間を深く体感できる。
【上げ馬神事の真相】議論を呼んだ祭礼の一体何が変わったのか?
祭礼のクライマックスとして約700年受け継がれてきた上げ馬神事は、少年騎手を乗せた馬が急峻な坂を駆け上がり、約2メートルの土壁を乗り越えることで、その年の農作物の豊凶や景気の良し悪しを占う農耕神事でした。しかし、馬の転倒や怪我、安楽死に至る事態が表面化し、2023年には三重県教育委員会からの勧告や社会的な抗議運動へと発展しました。
「神事の存続か、完全廃止か」という先鋭化した対立の中、神社側と地元保存会、獣医師団体、行政が協議を重ね、2024年の多度まつり直前に大規模な坂の改修工事が決行されました。馬が激突・転倒する主因となっていた約2メートルの土壁は完全に削り取られ、頂上部へ緩やかにつながるスロープ形状へと再整備されたのです。
現地関係者や公式発表資料によると、変化したのはコースの物理的構造だけではありません。青年層による馬の威嚇行為や過度な鞭打ちの厳禁、獣医師による厳格な事前健康チェック、出走頭数の制限など、動物愛護管理法および現代の福祉規範に即した厳しいガイドラインが運用されています。かつての荒々しい興奮を求めていた一部の見物客からは戸惑いの声も漏れましたが、2025年から2026年にかけては「馬と人が共に無事で神事を終えることこそが真の奉納」という共通認識が定着しつつあります。

【データで見る変遷】伝統と動物福祉の狭間|上げ馬神事の新旧比較
上げ馬神事の改変について、感情論を排して客観的なレギュレーションの推移を整理しました。何が過去の遺産となり、どのような安全基準が導入されたのかを比較データで提示します。
| 項目 | 詳細・数値データ(改変後) | 従来の基準(2023年以前) | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 坂の頂上部(壁)構造 | 土壁を全撤去、約15度のなだらかなスロープへ改修 | 高さ約1.7m〜2.0mの直立土壁 | 致命的な転倒事故リスクを構造的に排除。神事の成立条件を安全側に再定義した英断。 |
| 馬への接遇・騎乗ルール | 威嚇・暴力行為の厳禁、鞭の使用制限、練習期間の短縮 | 掛け声や周囲からの煽り、過度な推進行為が慣習化 | 民俗学的熱狂と近代動物愛護の衝突を解消するための必須規律。 |
| 医療監視体制 | 複数の日本中央競馬会(JRA)等に準じた獣医師が常駐 | 地元委託獣医師による簡易検診が中心 | 出走前後の心拍・歩様検査の義務化により、科学的モニタリングが確立。 |
| 観客・参拝者の推移 | 多度まつり期間中:約10万人(家族連れ層が増加傾向) | 最盛期:15万〜20万人(騒擾的な混雑が常態化) | 野次馬的な見物から、純粋な伝統芸能・神事鑑賞へと来訪者層がシフト。 |
「お伊勢参らばお多度もかけよ」北伊勢大神宮の歴史と白馬伝説の真価
神事の騒動によって一部のイメージが先行していますが、多度大社が持つ本来の社格と歴史は極めて深遠です。「お伊勢参らばお多度もかけよ、お多度かけねば片参り」と古謡に歌われた通り、伊勢神宮に参拝する旅人が必ず立ち寄るべき聖地として、江戸時代には東海道を行き交う人々から絶大な信仰を集めました。
主祭神は、天照大御神の第3子である天津彦根命(アマツヒコネノミコト)。太陽神の御子神として農耕や治水、産業の繁栄を司り、伊勢の北門を守護する重責を担ってきたことから「北伊勢大神宮」の名で親しまれています。
境内に漂う神聖な空気の象徴が、古くから伝わる「白馬伝説」です。多度山には神の使者である白馬が棲み、人々の幸福を願って天翔けたという伝承が残り、現在も神馬(しんめ)舎には本物の白馬が奉祀されています。参拝者が「人参(神馬の好物)」を奉納すると、静かに頭を下げて食す姿は訪れる者の心を捉えて離しません。
この白馬伝説にちなんだ授与品も豊富です。愛らしい白馬の陶器の中にお告げが収められた「白馬みくじ」や、災難除け・諸願成就の「白馬守」、澄んだ筆跡に朱印が映える「御朱印」は、参拝記念として高い人気を誇ります。神聖な自然林に抱かれた境内は、祭礼の時期でなくとも心を洗われる静寂に満ちています。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|「伝統破壊」批判のウラにあるもの
ネット上の言論空間では、改修工事に対して「外圧に屈して伝統を破壊した」「馬が壁を越えなければ神事の意味がない」といった批判的な言説が散見されます。一方で、「完全に中止すべきだった」という強硬な廃止論も一部に残っています。
しかし、歴史民俗資料を精査すると、「土壁を飛び越える」という形式そのものが、神事の歴史全体から見れば比較的新しい演出であったという事実が浮かび上がります。南北朝時代に始まったとされる上げ馬神事ですが、江戸時代の絵図や記録を辿ると、元来は傾斜地を力強く駆け抜ける「馳馬(はせうま)」の要素が主であり、昭和中期以降の観光化や競争意識の過熱に伴って、見せ場としての土壁が高く急峻に改造されていった経緯があります。
文化人類学的な視座に立てば、伝統芸能や祭祀は不変の化石ではなく、時代ごとの共同体の倫理観や社会規範と相互作用しながら姿を変えることで生命力を保ってきました。危険な見世物としての刺激を削ぎ落とし、本来の「人馬一体となって神意を仰ぐ」という原初的な祈りへと回帰したのが今回の改修であり、短絡的な「伝統の敗北」と捉えるのは早計です。
【現地ルポ&実態検証】初詣の混雑や桑名市多度大社の見どころ・アクセス徹底ガイド
桑名市多度町に位置する多度大社は、四季折々でまったく異なる表情を見せます。参拝を計画する際に知っておくべき実用情報と、境内散策のポイントを現地調査に基づき解説します。
見逃せない境内の見どころ:一目連神社と「みたらしの滝」
本宮へと続く参道は巨木に囲まれ、歩を進めるごとに下界の喧騒が消え去っていきます。本殿と並んで参拝すべきは、別宮の一目連神社(いちもくれんじんじゃ)です。天目一箇命(あめのまひとつのみこと)を祀り、鉄工や鍛冶の神としてのみならず、天候を司る龍神としても崇敬されています。一目連神社の社殿には扉がなく、神様が嵐を起こして外へ出られるようにあえて開け放たれているという特異な建築様式は一見の価値があります。
また、参道脇を流れる多度川のせせらぎや、水煙を上げる「みたらしの滝」周辺は、夏場でも冷涼な空気が漂う屈指のパワースポット。清流のせせらぎに耳を澄ませるだけで、心身の澱が洗い流されるような感覚を覚えます。
初詣の混雑状況とピークタイム
正月三が日には約30万人の参拝者が押し寄せます。最も混雑するのは元旦の午前0時〜午前3時、および三が日の午前10時〜午後15時です。この時間帯は本殿前の参拝列が階段下まで伸び、参拝までに1時間以上の待ち時間が発生します。混雑を避けるなら、早朝(午前8時前)または夕方(16時以降)の時間帯を狙うのが鉄則です。
駐車場アクセスと交通規制の実態
車でのアクセスの場合、東名阪自動車道の「桑名東IC」または「弥富IC」から約15分の好立地です。境内周辺には参拝者用の無料駐車場(約100台)が用意されていますが、初詣や5月の多度まつり期間中は周辺道路が激しく渋滞し、臨時の有料民間駐車場(1回500円〜1,000円程度)が中心となります。
混雑期に最もストレスなく参拝する裏技は、養老鉄道「多度駅」を利用するパーク&ライドです。多度駅から神社までは徒歩約15〜20分ですが、平坦な門前町の街並みを楽しめる距離であり、祭礼期間中などは臨時の直通シャトルバスも運行されます。
【プロの結論】多度大社参拝が向いている人・慎重になるべき人の判断基準
あらゆる神社仏閣と同様に、求める体験や価値観によって受け止め方は分かれます。現地を訪れる際の判断基準を提示します。
- 参拝を強くおすすめできる人:
- 伊勢神宮参拝の前後で、古くからの習わし通りに正式な「両参り」を完遂したい人
- 神馬や深い森、清流のせせらぎといった豊かな自然の気配の中で静かに祈りを捧げたい人
- 伝統の継承と現代的アップデートが調和した新しい祭祀の姿を、偏見なく見届けたい人
- 訪問に際して慎重な検討が必要な人:
- かつてのような危険と背中合わせの過激なアクションや熱狂的な見世物を神事に期待している人
- 階段や傾斜のある砂利道が多いため、歩行補助器具なしでの長距離移動に強い不安がある人(※車椅子用の迂回スロープは一部整備されていますが、本宮周辺は階段があります)

【多度大社】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:上げ馬神事は現在も開催されていますか?廃止されたというのは本当ですか?
A1:廃止されていません。毎年5月4日・5日の多度まつりにて開催されています。ただし、馬が駆け上がる土壁を撤去してスロープ形状へ改修し、動物愛護管理法に基づいた安全ガイドラインを徹底した上で実施されています。
Q2:御朱印や白馬のお守りはいつでも授与していただけますか?
A2:境内の社務所にて毎日授与されています。受付時間は通常午前9時から午後17時までです。季節限定の切り絵御朱印や、白馬をモチーフにした御守、白馬みくじも社務所窓口で受けることができます。
Q3:初詣や祭礼の時期以外でも神馬(白馬)に会うことはできますか?
A3:原則として毎日、境内の神馬舎にて白馬が迎えてくれます。天候や馬の体調により奥へ入っている場合もありますが、日中であれば人参のえさやり体験(初穂料制)を行うことも可能です。
Q4:電車とバスを利用する場合、最寄り駅からのアクセスはどうすればよいですか?
A4:最寄り駅は養老鉄道「多度駅」です。多度駅からは徒歩約15〜20分です。桑名駅前などからの直通バスは本数が限られているため、事前に養老鉄道の時刻表を確認して訪れることを推奨します。
まとめ:時代と共に紡がれる祈りの形と参拝の心得
多度大社が歩んできた道のりは、日本の伝統社会が直面する「文化の保存」と「生命への倫理」という重い課題に対する真摯な模索の軌跡そのものです。激しい批判を受け止め、痛みを伴う改修を経てなお、神前で手を合わせる人々の真剣な眼差しは何一つ変わっていません。
神馬の澄んだ瞳、緑深い多度山の静寂、そして歴史の荒波を越えて受け継がれる天津彦根命の御神徳。ネット上の断片的な言説にとらわれることなく、現地へ足を運び、清らかな神域の空気を肌で感じることで、1500年を超えて息づく祈りの原点に触れられるはずです。 (出典: 多 度 大社(Yahoo!ニュース))